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Instructions:
神々の山
神々の山嶺
CoplePossはいく生族進善
・夢は、借り
...
谷口ジロ
作夢枕獏
画公ロジロー
1008年11月20日第1920979010年00
cO979*1000E
定価本体1000円十税
神々の
まぁ、と
作夢枕獏
画:谷口ジロ
夢枕獏
いや...ここ、「どうだったのか
谷口ジ
社長の
かみがあのいただき
第
もうひとつの山報告ロジロー
神々
334
第9話帳グランドジョラス
第10話【優羽生丈二の手記】
第1話へ過去
第12話【対想の山
第13話【ベサガルマータ】
第14話へK2
第16話【NLになった男】
第16話【総岩盤の王
第17話【タイガー
第18話に独りの山
かみがみの
いただき
313271247
225
!35
157
24
これは、第2巻目が
★この作品はフイクションです。実在の人物
団体・事件などには、いっさい、関係ありません
第9話
ョラ
コワスはモンプラ
グランドショ
その頂穂は東西に約1千千キロの長さに
伸びておりBつのビークがある
プンの北東にある
東儀のウォーカー頂が裸高4250メートルで
グランドショウスの最高点である
60年東峰の最高点を最初に踏んだ男
W・H・ウォーカーの名がこの頂の名にあてられた
このグランドショラス北壁は
ヨーロッパ、アルフスでもおおおかしです。
特にウォーカー頂に抜ける高度差
1200メートルのウォーカー側設は有名で
1988年にカンシェスポントチンズの
三人によって初登攀された
冬期の初登録は、JigaをごWネオッティが
果たしているが、むろんこれは単独ではない。
仕方ありま
せんでした
羽生はとめても
行くつもりで
いることは
わかって
いましたからね
それに
だめだというなら
初めから羽生を
雇ったり
しませんよ
深町は〝岳水館〟の水野治を訪ねた
ええ
しかも
独りでね
で
結局
羽生は出かけて
行ったのですね
ひとり
......?
ですか
ええ
日本を
発つ前から
羽生は
独りでした
...???...?
そのことを
知っていたのは
私と多田
だけです
メーカーの
〝グランドジョラス〟
側としては
知っていて行かせ
たとなれば
問題ですからねえ
まその後の
ことは
だいたい
皆さんが知ってる
とおりです
羽生が落ち
たんですね
ええ
羽生がレショ小屋を出てウォーカー側稜に
取り付いたのは2月18日だった
その1日目にレビュファ・クラックを越え
2日目にその上部この壁に取り付いている
時に羽生は落ちた
その落愛およそSHメートル全身打撲
左腕:左脚骨折・肋骨三本骨折
それから羽生の片腕だけの脱出行が始まる
のである、その脱出行はある意味では
危険な難度の高い登業であった
行く時も
独り...
帰ってくる
時も羽生は
独りでしたよ
.....
......
ところで
羽生さんの
行方なんですか
今どこで
どうしているか
ご存じない
ですか?
さあ?
わかりま
せんねぇ
あの
エヴェレストの
一件のあと
店を辞めてから
なんの連絡も
ないんです
でも
どうして
羽生丈二のこと
そんなに知りた
がるんです?
ええ
そうですか
...
実は
彼の山に興味が
ありましてね
いずれ
できることなら
羽生丈二のことを
本にしてみたいと
思っているんです
ほう
...
羽生の山
ですか
...
どうで
しょう?
誰か羽生丈二の
行方を知っている
人の心当りは
ありませんか
それに可能なら
本人の
インタビューも
加えたいと...
うーん
そうです
ねえ...
あ...
そうそう
そういえば
羽生のね
手記があるん
ですよ
手記
それは
どんな手記
なんですか?
グランド
ジョラスの
時の分ですよ
グランド
ジョラス
...??
帰ってきてから
どこかに書いたん
ですか?
いいえ
帰ってきてから
じゃあ
ありません
攀っている最中に
グランドジョラスの
岩壁で書いた
ものですよ
へえ
そんなものか
あるんですか?
ええ
どこの雑誌にも
発表されて
ませんし
私も
読んだことは
ないんですよ
それで...
その手記は
どこに?
ええ
持っている方
なら知って
いますが...
今ここで
その方の名を
言うわけには
いきません
でも...深町さんの
ことは話して
おきましょう
どういう返事か
もらえるか
わかりま
せんが
ぜひ
読みたいと
そう
伝えて下さい
はい
よろしく
お願いします
わかりました
...また、あの
夢を見ていた
星の群れの中に
そびえたつ山の頂に向かって
ただ黙々と
たった独りで撃ってゆく男!!
結婚すると、
背中しか見えない
その男がもし
振り返ったのなら
もしかすると
それは
あの羽生丈二...
自分はあの男に置いて
ゆかれるー
「まてーーっ
「おれを置いていくなーっ
うう
浅い眠りだった
夢を見ながらそれを
夢だと認識している
自分がいる
じきにこの夢も
醒めるだろう
少しずつ夢よりも
自分の思考の密度が
濃くなっていく
ああ...
そうだ
手記だ
羽生が
グランドジョラスで
書いたという
.....手記
うう
いったい、それは
どんなものなのか...
日中の陽光が狭い部屋にさしこみ
むっとする暑苦しさて深町はめざめた
ふう
チカ
チカ
服を着たまま眠っていたことに気づく
ん?
眠っている間に電話があったらしく
メッセージランブが点減していた
あ...
フロント
ですか
メッセージ
聞かせて
下さい
はい
岸涼子さま
という方から
電話が
ありました
時間は..
午前10時30分
くらいでした
...
...
岸涼子
また連絡
いたしますとの
メッセージが
入っています
誰だろう
岸涼子から2度目の電話が
あったのはその日の夜だった。
...???そうなのか?
水野さんから
お話をうかかい
ました
...私
岸文太郎の
妹です
...
あ..あの
岸文太郎
さんの!?
はい
なぜ...岸文太郎の妹が...
羽生さんの
ことでなにか
あったんですか?
深町さんは
色々と羽生さんの
ことをお調べに
なっていると
うかがいましたが
ええ
まあ
...もしかして
深町さんは羽生さんと
どこかでお会いに
なったんじゃ
ありませんか?
深町さんは
確かヒマラヤへ
行ってらしたん
ですよね
ええ
ええ
よく
ごぞんじ
ですね
新聞記事で
見ました
ネバール側から
エヴェレストを
登ると
頂上は踏めま
せんでしたか
その時に
羽生さんと
お会いに
なったんですか?
...
深町は一瞬迷ったが、
はい
会ったん
ですか
羽生さんに!?
じゃあ
羽生さんは、まだ
ネバールにいるん
ですね!?
......会った
といっても
カトマンドゥで
羽生丈二によく
似た人物に会った
だけなんです
会い
ました
私は彼に
羽生丈二では
ないかとたずねて
みましたが
フフフェルの
彼はなにも
答えずに
そのまま行って
しまいました
ても...
ええ
それを
確かめたい
こともあって
深町さんは
その方のことを
羽生さんだと考えて
いらっしゃるんでしょう
今羽生さんが
どこにいるか御存知と
思われる方にお会い
して話をうかがって
いるのです
2日後―深町は新宿で
岸涼子と会った
岸涼子さん
ですか?
あ
どうも
...岸です
はい
深町です
涼子さん
あなたは
羽生さんが
ネパールにいる
ことを御存知
だったんですか?
いいえ
ただ帰ってきた
という話を
耳にして
いませんので
もしかしたら
あちらにいるんじゃ
ないかと思い
まして...
...
羽生さんが
ネバールに
行ったのは
もう何年も前
ですから...
実はわたしも
羽生さんがどこにいる
かを知りたいんです
水野さんから
この話を
うかがった時
羽生さんの
手記がお読みに
なりたいとか
え?
もしかしたら
深町さんからなにか
お聞きできるのでは
ないかと連絡を
さしあげたのです
じゃあ
...
あなたが
羽生さんの手記を
お持ちなん
ですか?
深町さんには
いろいろうかがい
たいことが
あるのですが
その前にまず
わたしが預かっている
羽生さんの手記に
眼を通して下さい
はい
しかし
フラッそうか
...
なぜ
あなたが
羽生さんの
手記を?
本人から
預かったの
です
あ...
いや失礼
我がった?
たちいった
質問でした
いえ
気になさら
ないで
下さい
いろいろ
迷いましたが
ここへは覚悟
してきましたから
この話を
どなたかにする
気はもともと
なかったの
ですが...
羽生さんと
もう一度
会えるならと
深町さんが
羽生さんのことを
何か御存知かも
しれないと考えて
決心しました
どうぞ
お読み
下さい
よろしいん
ですか
ええ
かまいません
それでは
読ませて
いただきます
第10話
適羽生丈二の手記
普段付けていたが、ヤバいです。
そして、そんなことなく知ってるから
ご飯を飲んでくださっていたのですが
そうしていたのだろうが、
えっ
それがこういうことですが、これからも
しかしそんな大人としての大きさは、
自分の身体の力が
そんなことなんですから、
そういえば、それでも
何か頭にもかかっていたのか
これまでだったのだが
その...それでは
みながった。頭に
ようと
1979年2月18日
寒い
覚悟はしていたがやはり寒い
ヨーロッパアルプスの3000メートルを
超える営業で被害期の夜をすこすことに
ついてはもちろん感情していたのだが、
その温度に自分が
さらされてみると
想像以上に
身に応える
しかしどんなに寒くともその
寒さより自分の心臓の方がとた
今ヘッドランプの
灯りをたよりに
これを書いている
夜の12時だ
気温は2時間前に
マイナス32度
風が強い
風速30メートルはあるはずだ。
いつもここはこういう風が吹く。
今いる場所は
レビュファクラックの上だ。
今朝、岩盤に取り付いて
レビュファクラックを繰りきった
強い風が吹くたびに
自分の身体がツェルトごと
愛から離れそうになる
思わず身体が
突っ張ってしまう
眠れない
眠れないからこれを書きだしたのだ
夜「あまり眠れないことはわかっていた。
字を書いていれば気分がまずれるし、
少なくとも同じことを何度も考えずにすむ
夜は眠ることより
疲労した身体を
休めるためにあるのだと
気持ちの上で
割りきってきた
そういう覚悟を最初
からしておかないと
積神的にきついからだ
風が吹くたびスノーシャワーが
ツェルトにふりかかって落ちていく
無限につづく壁の途中に、ゴミのように
自分が引っかかっているイメージが浮かぶ
この天と地の間に自分ひとりだけが
ぽつんと生きている
ジェルトを開いて外を見る。
凄い星空だ
大地の熱が空に抜け出してゆく
音をたててぎちぎちとこの愛
全体が冷え込んでゆくのがわかる
いぞ
アイセンの刃も蹴り込めないくらい
雪がみんな凍りついてしまえ
ギュッ
ハアアア
ホールベンを握っている
指先は凍ってしまった
ように感覚がない
ギュッ
時々強く指先を揉んだり
叩いたりしながら
長谷はもうレショ小屋に
入っているのだろうか
入っていればもう自分が
クランドショラスに取り付いている
ことはわかっているだろう
自分が今どうしてここに
いるのかそのことについて
考える
長谷を怨んでいるというのではない
あの男の邪魔をしてやろうと
いうのでもない
いやがらせでもない
自分の気持ちであるのに
それをうまく表現できない
ただ、あの男を意識してはいる
負けたくないとも思っている
あの男が嫌いというのでもない、
ハアア
何故こんなことを考えばじめて
しまったのだろう
うまく自分の感情をまとめられ
ないが今ここにいるのは
守るためではないだろうか
自分を守るためにここに来ている
自分という人間には
これしかない
岩を舞るという
ことしかない
その自分から
長谷はこれしかない
ものを奪ったのだ
もちろん長谷は
そんなことは意識して
いないだろう
だが少なくともあの男は
おれから鬼スラを奪った
その奪われたものを取り戻すために
自分は今ここにいるのだろうと思う
だぶんというのは自分の気持ちを
うまく表現できないからだ。
だぶんそうだ
山屋はただ登ればいい
それがそのまま文章や
言葉になるという
行為と同じなのだ
もう指が酸界にきた
はああ
この続きは
頭の中でやろう
あまり深く自分と向き
あわないようにしないと
この壁はやれない
独りぼっちだ
地球上の人間がみんな死んでしまってこの壁と風の中
自分独りだけが取り残されてしまったみたいだ
2月19日
落ちた、失敗した
おれは助けた
クランドジョラスに設北した
何故死ななかったのだろう
落ちたまま気づかずに死んでいれば、
こうやって敗北に気つかずに済むのに
うう
寒い
身体中が痛い
ああまったく
なんということに
なってしまったのか
ハァ
~~~ッ
死んでしまう
たぶんおれはここで
死んでしまうかもしれない
何故落ちたのか
死ぬという言葉を
自分で書くのは生々しい。
書く前よりも書いてからの
方が恐くなった
ああ
畜生
スカイフックだ
あれを上の岩の出っ張りに
引っかけて休んでいたのだ
そのすぐ上が
オーバーハングだった
ルートが見えていた
難しいがそこから直登してゆく
ルートが見えていた
左にトラパースしてから
上にゆくのが楽な
本来のルートだが
おれのルートじゃない
それは他人がやったルートを
なぞるだけの行為だ
まだ誰もやっていない
直登ルートこそが
このおれのルートなのだ
それだけじゃない
その岩壁は直登こそが
美しい
それは直登されるための岩壁なのだと
そんな気がしたのだ
ガリ
ガリ
石のように凍りついたチョコレートを
噛み飲み込んでおれは直登
することにしたのだった
ガリ
ガリ
シュッ
直登するルートは難しかった
しかしそれは不可能という意味じゃない
もし本当にできない愛なら
おれも直登はしなかったと思う。
順調だった
たいへんそうに見えた場所も
すんなりクリアできた
気になるのはあちこちの
岩の窪みや溝に張りついた
雪が堅く凍りついていることだ
カチャ
あれにうっかり体重を
かけるとそのまま剥がれ
落ちることがある
2ビッチ撃って
小さなテラスに出た
懸垂下降で降り
下の荷をそのテラス
まで上げる
そこから上は雪のついていない
ガラスのような
青い氷になっていた
何百年か何千年かそれとも何万年かは
わからないが、このグランドショラスが
持っている太古からの時間が
この青い氷となって岩の奥から
滲み出てきたような気がした。
落ちたのは2メートルくらい
襲ったあたりだったと思う
ああっ
右足に乗せていた体重がいきなり、
消えて身体が宙に浮いたのである
かろうじて壁に残っていた
左足で氷の壁を蹴った
落下していく時、25メートル下の
テラスに身体がぶつからないように
するためだった
薄中からどこかに吸い込まれる
ような落下感があった
その瞬間ついにやったか
そういう思いと
これでおれは死ぬなという気持ちを
同時に感じていたように思う
アイセンの派先の向こうに
青空があって
その刃先に白い水のかけらが
くっついているのも見えた。
ああいう時に、そういう細かい、
部分まで眼の中に焼きついている
ことがなんだか不思議だった
ああこれで自分は
長谷に負けたのだな
もうがんばらなくてもいいのだな
これで楽になれるのだな
そんな気持ちが交互に
頭の中に生まれた
衝撃
その後のことは記憶にない。
う...
うう
おれはザイルで宙ぶらりんに
なっている状態で気づいた
身体のあちこちがいたかった。
フッ
フッ
息をするたびに肺に激痛が疾る。
左の肋骨が折れているらしい
フッ
フッ
おまけに寒かった
く...
時計を見ると
愛さで蘇生したようなものだ。
落下してから4時間半が経っていた
両足ともアイセンがはずれ
アイスハンマー「もアイスバイルも
どこかへ落したのか消えてしまっていた
手にナイフを握っていた
ハァ
くうっ
ハァ
左足に感覚はない左腕もしびれて
しまって自分の腕とは思えなかった。
おそろしいことに手袋もなかった
どうやら気を失っているうちに
苦しくなって無意識のうちに着ていた
ものをナイフで切り裂いたらしい
よく自分を支えている
ザイルを切らなかったものだ
右手と右足だけで
ゆっくり身体を移動させ
すぐ近くのテラスへ
たどりつく
もう夕梨だった
ふうっ
はふぅ〜〜〜
その時あらためて自分の内部に
恐怖が広がった
だいじなことに気がついたからだ。
食糧もツェルトも寝袋もみんな
ここから23メートル上のテラスに
泣いたままであったことを思い出した
テラスのあった場所に
ザイルの支点を置き
合わせて50メートル
そこから25メートルは
登っている
たぶん落下していったおれの体重をザイルが支え
伸びきったところで岩にぷつかったのだろうと思う。
まずおれの身体はテラスの高さまで25メートル
落ちそこからさらに支点からローフの長さ分
25メートル落ちたことになる
女足は、まった動かない
自分の基準の正保証が
俺に触っている。
ただ、完璧にかけ、やっぱり
おそし
以下も移動させてくれて
「うえ、たどいついて
肋が折れた腕
左足が利かない
うー
はぁ...
このメモを書いているうちに
陽が沈んで星が出た
今から陽が沈むまでの時間では
とても上のテラスまでたどりつけそうにない
真下に青く沈んでいる
レショ氷河はもう夜だ
寒い
身を守るものは
もう何もない
はあ
...
ガチガチ
ガチガチ
ただじっとうずく
まっているだけだ
眠らなければならない
しかし眠ったら
たぶんまた落ちるだろう
またベンをとった
何か書こう
書いているうちは死なない。
書けなくなった時が死ぬ時だ
しかし、何を書こうか
そうだ。壁のことを書いておこう
あんなに焦って何かに急かさ
れるように寝にとりついたのに
とりついたら急に
気分が落ちついて
楽になった
それでも琴っている
最中に何度も
下を見た
はふぅ
はあ
はあ
自分の股の下からいつ
長谷の顔が覗くか
おれはそれを怖がっていたのだろう
寒い
頭の中空っぽ
思い出してはベンを取る
書くことがなくなって
しまったみたいだ
何度もうとうとした
左手はもう凍傷に
かかっている
右手でこれを書いている
闇の中なので、いったいどんな学に
なっているか、読める字になった
いるのだろうか
いやかくほかない、書くことが
目てきたからだ
かくことがもく的だ
星が凄い
星が凄い
とのくらい時かんがたったのか
時計を見るのがこわい
うー
カチガチ
ガチガチ
ガチ
風がそんなに強くない
ことが救いだ
強かったらもう
1時間前に
死んでいるだろう
灯りが見えていた
レショ氷河の先だ
あっちの方に家なんか
あったろうか
その灯りが
動いている
こちらへ登ってくる
誰か助けが
きたのだろうか
ちがうぞ
これは
幻覚だ
いやちがう
ひとがあんなにはやく
うごけるわけがない
げんかく
げんかく
フーッ
フーッ
ぐっ
ぐっ
ううっ
おちた
はじめ、ぶらさがったまま
がんべきとははんたいかわの
ぐうがんに手や足を
のばしていた
ちゅうぷらりんになった
ショックで目がさめた
ハッ
ハッ
どうしてまちがったのか
くらかったからだ
ぐぐ
ハア
くらかったのにもう
たい力がないから
ハッ
もうたい力がないからこんど
ぷらぷったらもどってこれない
ハッ
ハア
ハッ
ハッ
ハァア
こわい
しにたくない
そうだ
しにたくないとおもうことは
ひつようなことだ
死にたくない
明日夜が明ければ
明るくなりさえすれば
やろうあした
しにものくるいでのほってみよう
これまでのさいこうののほり
そのことだけかんがえよう
生きているイメージ、そのイヌージで
おー
「お
んだな
いまこえがきこえていた
し
し
だれかたすけにきたのだ
とおもった
そこだここだとへんじゃ
しそうになった
げんかくやげんちょうに
へんじしたらおしまいだ
死
ああ
きしのやつだ
きしのやつがそこにぶらさしがっておれを見ている
あのときのかっこう
ちみどろのかお
でもわらっている
おいておいでをしている
きしよ
きしよう
おれもいきたいけどな
そこにいって
やりたいけれどな
まだジョラスをのぼって
いるとちゅうなんだ
さいごまでやらせてくれ
やれるだけやって
こんかぎりやって
どうしてもいかなければ
いけないときにはどうせ
おまえのところへいく
おれはきしにむかって
こえをかけてしまった
でもきしならいい
いまはがんばらせてくれ
あとたったの
にじゅうらメートル
おい
きしどこいった
おまえならわかるだろう
よくわかっているような気がするのに
かんがえたりするときゅうにわからなくなる
なんでのぼるのかな
これしかないからだろ
おれは山だけだという
ことはわかっている
あしたはやるぞ
これまでにじゅうねんちかくも
おれは岩にしがみついてのぼる
ことだけやってきた
あしたの25メートルは
みせてやる
これまでのおれの
ありったけを
つらいときには、まよりもっと
つらいときのこととをおもいだせば
いまのことくらいたえられる
こんなことくらいで
きし
きしよう
もういちどかおだせよ
おい
2月20日
使えるのは、右手とそしてお足を
だけだった、そして歯
ギュッ
シュリンゲを使ってメイン
サイルにブルージックをとった
カチャ
ぐぐっ
ぐううっ
右足を岩壁に当て、右手でメインサイルを
握って体重を支える
その問題でフルーシックの結び目を
上へ移動させる
ほんの少しずつ5ミリか1センチずつ
メインザイルの上を滑らせながら穿った
フッ
フッ
ハァ
1回ごとに体力のありったけを使って
しまうためしはらく休まなければならない
これが簡単なこと
じゃない
ハア
ハア
ぐっ
ふう
やっとーメートル禁っても
30センチか時にはSOセンテ
ちかくもずりおちてしまう
はぁ
はぁ
はぁ
フッ
はぁ
フッ
凍った結び目を歯で
といてまた結ぶ
ハア
ハア
これを気の遠くなるような
回数やったのだ
ハフ
ハフ
ハフ
ハァ
ハア
ハァ
ハア
ハァ
朝、その作業を始めて
だどりついたら
夕方になっていた
9時間?
はふぅ
10時間?
ハッ
1日中おれは
それをやったのだ
最
ハッ
ハッ
ハァ
ツェルトを張って中に潜り込む。
ハア
ありったけの衣類を
満込んだ
石みたいに堅い
チョコレートを食べ
ハフ
ハフ
雪で湯を沸かしてそれに
残ったチョコレートと砂糖を
ありったけ溶かして飲んだ
生選といっても
もうひと軽ことによったら
もう数時間生きてもいいと
いう許可をもらっただけだ
たっぷり湯を飲んだ
というのに、もうどういう
気力も湧いてこない
フ!
フー
これまでの20年分のありったけを
根こそぎ今日一日で使いきって
しまった
だったこの25メート心を暴るためだけに
これまでの20年間はあったのではないが、
こんなことはもう二度と
できないだろう
フー
!
もう何も
おれの中には残っていない
気力をか体力とか言葉で言いあらわせるもの
じゃなく言いあらわせないものまですべて
この禁りに使ってしまった
そして手に入れたのが、あとひと晩か数時間
生きてもいいという様利だ
神がとか幸運がとは言わない、
このおれがその権利を手に入れたのだ
あっという間に
夜になった
風が出てきた
寒い
昨夜より
ずっと寒い
うとうとはするが
それは眠りと呼べる
ほどのものじゃない
攀っている間も幻聴は
ずっと聴こえていた
髪のやつや伊藤さんまでが
出てきて先頭をかわろうかと
声をかけてきた
まだだいじょうぶだ
もう少しやらせて
下さいよ
そんなことを答え
ながら嫌った
湯を飲んでいったん
幻聴はおさまったが、
またそれが始まったらしい
うとうとしていたら名前を
呼ばれて起きてしまったのだ
返事はしない
幻聴だとわかっているからだ
その声は何もない吹きさらしの
空間から聴こえていたからだ。
う.....
何度もめさめる
風がいよいよ強くなってツェルト
こともって、いかれそうになる
助けはくるのだろうか
サポート隊がついてるわけ
じゃないからだれかがわざわざ
見つけはしないだろう
見つけるとすれば
ここをねらっている長谷か
長谷のサポート隊の
偵察期のだれかだろう
う.....
またおきた
もうかってにしてくれ
おれをおこすな
かおの上にツェルトの
一部がおちてきた
ハーケンがはずれたのだ。
外へ出てハーケンを打ちなおす
気力はないもうおれは
なんにもできないやりたくない
2本目のハーケンがはずれて風にあおられて
ツェルトごとあやうくおちるところだった
わっ
ハッ
ハッ
ハフウ
このはじょで自分のからだを
かくほするまで1じかん
ちかくかかってしまった
うう...
ヘッドランブのでんちも
それでほとんどつかい
きってしまった
さむい
シュラフとツェルトをかぶっているふん
きのうよりマシだが、嵐のことを
かんがえればおなじだ
たいりょくがなくなっているんじゃのう
より抜きょうはわるくなっている。
すごくさむいさむぃ
まだ、よるははじまったばかりだ
またあの気がとおくなる
ようなながい、よるをすごす
と思うとぜつぼうてさ
になる
さっきから行れつかみえている
しろいまものをきた、たくさんの
人があるいてゆく
ぜんぶしっている人ばかりだ
でもその人たちがくたいできに
だれなのかということがわからない。
どこへいくのかときこうと
したらぎょうれつの
ひとりがふりむいた
きいて
こたえられたら
きっとすごくこわい
だろうという
気がして
ぼくはそのひとに
きかなかった
やっぱりきかなくて
よかった
あれはよおく考えてみたらけんかくなん
だからげんかくにき、たらじぶんも
げんかくのなかまいりをしてしまう。
フー
フー
フ
はなでばかり息をしていたら、
はなのおくがいたくなった
ふっ!
てばなをかんだらあかいちのまじった
シャーベット状のはながでてきた
ゴホッ
ゴホッ
せきをするとむねがいたい
フーー
フ
あばらにひびがはいって
いるのだろう
ううっ
はぁぁ
「ひだりてのこゆびとくすりゆびは
むらさまいるになってきている
ちががちんかちんに凍って
しまっているのだろう
ひだりあしのゆびも
たぶんダメになっている
こうなったらゆびを切り
おとさなければならないのは
おれはよくしっている
なんどもみたから
はぁあ
はぁあ
あたまがかゆい
すなが、かみのけのあいだに
いっぱいつまっているようで
かたいものがつめのすきまに
はいってくる
かく
ほろぼろとそれが
おちてくる
ヘルメットもどここかになくした
きのうおちた時どこかで
頭をうっているのだろう
みるとかたまった血だった
まっくろなよるだ
りょうこさん
なんと言っておけばよかったのか
りょうこさん、すみません
なにかしてあげられることもうない
できないから
さっきからおれのそでを
きしのやつがひっぱっている
おれの手をひこうとしている
もうじかんきたか
そうか
もういかなきゃいけないか
やりのこしたことないか
さびしいのか
きしよう
いってやってもいいけどな
でもなまだななっとくが
できてないような気がしてな
まてよ
もうちょっと
キミー
きしよう
そんなにかなしそうな
かおするな
おれがこえに
だしたのか
あたまのなかで
こたえたのか
おれはまだ
いかないよ
というと
きしのすがたが消えた
こうとかぜのおと
ああそでをひっぱって
いたのは風か
フーッ
フーッ
たとえかぜでも
ひかれてそっちへいけば
まっくろなよるのそこへ
おちる
きしのやつは
何どもでてくる
おれのそでをいいたり
ナイフを出したりして
ザイルを切ろうとした
ヘーケンに手をあてて
それをひっこぬこうとする
そんなにつめたいハーケンを
頭でかんだってだのだ
そんなにおれにきてもらいたいのか
そんならいってしまおうか
きし
おれはほんとうに声をだしていた
もうすこしまっていれば
いずれおまえのところに
おれはいってやるよ
いつかおちる。その日まで
おれはゆくぞ
おれがおちるのをこわがって山をやめたり
おまえのことなんかわすれてひとなみなこと
なんかをかんがえはじめたら、
そういうときにおれをつれにこい
いまはまだそのときじゃない
おれはおちるまではいくから
かならずいくから
ただわざとおちる
それだけはできないんだ
きしよう
きしよう
そんなかなしい
かおをするな
そんな目でおれを見るな
いいか
おれはぜったいに
おれだけがしあわせに
なろうなんて
おもっちゃいない
おればらくになんてなろうと
おもっちゃいない
いいか
おれがやくそくできるのは
それだけだ
あんしんしろ
おれはここくるのをやめないから
おれはずっと山を行く
おい
キミー
きしょ
ああ
よく来たな
きし
ビールでも飲みに
行かないか
ひーるの東
うまいビールの
南
どこでもいい
そこまではのぼってきたら
まず、ものもうまいけれども
クラックがはしっているのはおれが泣いて
きっとそこだとおもっている
ながいよるだ
かくことがあまりなくなって
かんがえるのがめんどうに
なったからだとおもうのだが、
もうくるうまでもない
しょくじだけはしっかり
てんじょうのかざりからで
あれはもうゆくな
くえないものまででんしん
はじらどこまでいった
どこまでも
倒れるなよ
ながいよろ
なかいながいよる
なかい
フ!
フ
やっと眠くなって
きた
でも眠ったら死んで
しまうというのは
ほんとうだろうかと
じっけんでも
できない
しょうめいは
しんでしまったら
ねむいからよぶな
よんでももうおきないよ
おれは
おおい
おおおい
ここ
返事しない
しないよ
しないです
こたえるだけ
そん
それは、それではない。
それでも、
それでも、
メメ
ぼく
2月21日
2月22日
病院のベッド
ヘリに助けあげられてジョラスの上を
飛んだ時涙が出た。
いったいおれはここへ何をしに来たんだろう
恐縮するためにわざわざこんな
ところまで来たのだろうか
第11話
®過去
死ないだとあらる
というのはじきなりだ。
そのほうが、おかしくて
・みがみさんそこりがて
山くらいありましてくるんっ
わかってると思うのでしたが、
なお、しまいっちゃうからと
あれもうれして、
ちょうどそのとしては、
おしいおっぱいくから
かなず、いくから
鬼気迫る文章であった
凍傷になりかけた右手に
ボールペンを振り
てるのか
読んでいて深町は何度か
背筋に震えが疾りそうになった。
とんでもないしろものであった
でもない
レストリームの
闇の中で生きのびるために
羽生はこの手記を書いたのだ
羽生はレビュファクラックから
少し登ったところにある岩棚から
ヘリによって救出された
しかし
最初の発見は
ヘリによるもの。
ではなかった
羽生の事故に
最初に気づいたのは
長谷の先発隊として岩壁の様子を
見に来た原田であった
下から見上げると
当然あるべき場所に
羽生の姿が見えなかった
へんだな
カシンルートの
はずだか...
羽生さんの
姿が見あたら
ない
レショ小屋に戻って
そこにいた小屋の主人と
長谷にそれを告げた
あ.....
いた
あそこだ!!!
双眼鏡で捜して
ようやく岩の陰に小さくなって、
うずくまっている羽生の姿を発見し
ヘリを呼んだ
ヘリが近くを
ホバリングしても
最初、羽生はいったん
顔をあげてそれを見ていたが、
幻覚でも見たかのように
再び顔を伏せてしまった
という
そして...
3度目に顔をあげ
ようやく羽生はべリを現実のものと
して認識したらしい。
左腕の上腕部の骨が複雑骨折
肋骨3本骨折
左脚大腿骨骨折
頭部にも打撲による傷
全身打撲
左手の小指と薬指凍傷
左足の小指と中指・凍傷
この4本の指は手術で切りとられた
これだけの傷を負う事故にあいながら
片手片足で25メートルの登録を単独で
やってのけしかも真冬に3000メートルを超える
場所でのビヴァークを2夜にわたってしたー
これはヨーロッパ登山史上類をみない
できごとであった
~
ありがとう
ございます
たいへん
貴重なもの
ですね
ええ
しかし
どうして
この手記が
岸さんの
ところへ?
...
羽生さん
から
いただいた
のです
それは
...
直接
本人から
ですか?
ええ
...?
もらった?
羽生さんが
日本へ帰って
一ヵ月後
くらいに
この手記を
わたしのところへ
持って
きたんです
これを
もらって
くれませんか
わたしに?
ええ
どうして?
...
...
もらって
ほしいんです
あなたに
...???クラスラ?
羽生さんは
無理やり
私の部屋に
ノートを置いて
いなくなり
ました
わたしは
それを
読みました
...読んで...
ようやく自分の
兄の死について
羽生さんが
苦しみぬいていたと
いうことが理解
できたんです
山にいても
どこにいても
...
すみませ
羽生さんは
この手記のような
対話を
いつも
心のどこかで
しつづけている
のだなと...
それで
なにもかも
わかったんです
.....
というと
兄が
死んでから
毎月
わたしのところへ
お金が送られて
きたんです
お金?
ええ
最初の時だけ
中に手紙が
入っていて
”がんばってください!!
とひと言書かれて
いました
毎月
きちんと
一万円
その送り主が
羽生さん
だったんです
その手紙の字と
手記の字が
同じでした
...
兄が
亡くなって
3年..
一度も休まず
そのお金は
送られつづけて
きました
わたしは
...
手記を読んだ
翌日:
羽生さんに
会いに
行きました
それで
...
それから
自然に...
おつきあいする
ようになったん
です
...
あのヒマラヤの
事件がおこる
まで
ヒマラヤから
帰ってきてから
半年ほどして
羽生さんは
日本からいなく
なったんです
6年ほど
わたしたちの
つきあいは
つづきました
それでも
3年前までは
ネパールから月々
一万円というお金が
届けられていました
ええ
その後の
ことはわかり
ませんが
わたしは
いまでも
羽生さんはネパールに
いるものとばかり
思っていました
...
3年前
まで...?
当然
ネバールとは
貨幣価値が
極端に違います
それで
仕送りを
あきらめたのか
そんなとき
羽生さんを
探しているという
深町さんのことを
知りました
それとも
他の理由で
ネパールを
離れたのか...
そう
ですか
いっそ
ネバールへ
行ってみようかとも
考えました
教えて
いただけますか
深町さん
今度は
あなたの
番です
はい
あなたは
ネバールで羽生さんに
お会いしたのでは
ありませんか?
ええ
会いました
...???
深町は覚悟を決めた
もう迷う理由は
なにもなかった
カメラがマロリーのものかどうかにふれ
なくともカメラぬきに語れるわけもない
深町はネバールでの話を細部に
わたって岸涼子に語って寝かせた
あなたのお話を
うかがって
はっきりと
確信をもつことが
できました
彼は
まちがいなく
羽生丈二
です
フフフラフラ
左手の薬指と
小指が無いのを
この眼で
見ました
羽生丈二が
今もネパールに
いるというのは
おそらく間違い
ないでしょう
そのことに
関しては
まだなにも
わかって
いません...
しかし...
彼がネパールの
どこにいるのか
何故そこにいるのか
初夏
ホテルから自宅のマンションに戻って
きてからほぼひと月が過ぎた
深町は執拗に
仕事の合間をみては
羽生丈二のことを
調べつづけている
羽生のことを調べつくす。
その作業に没頭することで
自分はなにから逃げようとして
いるのか深町は意識していた
瀬川加代子のことだ
彼女との間にぶらさがっている
結論から、自分は逃げようと
している
心を向けまいとすればするほど
そのことを考えてしまう
自分は瀬川加代子という女に
愛情を抱いているのか?
どうしようもないことについて間おうとして
いるー過去を責めようとしている
エヴェレストから戻って
ほぼ2ヵ月ー
深町はようやく瀬川加代子と会い
その問いの答えを見つけ出そう
と思った
しばらく
だね
あいかわらず
忙しそうじゃ
ないか
ええ
ああ
失敗
したよ
ええ
知っているわ
でも
エヴェレスト
残念だった
わね
...
どうせ
また行くん
でしょう
...いい
もう
やめましょう
...こんなこと
え?
やめるって
ええ
こんなこと
つづけていっても
誰も幸福に
なれないじゃない
わかってる
のよ
こんなふうに
会うのはもう
やめましょうって
言ってるの
あなたは
わたしを苦しめる
ためにまだわたしを
好きだなんて
言ってるのよ
加代子
...?
あなたも
わたしも
...
いっそ
許さないと
言って
その方が
お互い楽な
生きかたが
できるわ
楽?
知ってたん
でしょう
わたしと
加倉さんとの
こと...?
こんなこと
よくないわ
わたしたち
もう
おわっている
のよ
答えのない問い
出口のない迷路
半年前
友人の加倉典明が
死んだー
自分はまた勝者のいない
不毛なゲームをやろうとしている
第12話
◎幻想の山
加倉典明
加代子をおれから
奪った男だ
加倉はライターを
やっていた
頼まれれば何でもやるが、ボジション
としてはアウトドアライターである
深町が加倉と最初に仕事を
したのは6年前1
ある雑誌で「大日本釣名人」というベージを
カメラマンとライターとしておよそ一年近く
一緒に創っていたことがある
加倉とは年齢も大学も
同じせいか気が合った
仕事を離れて何度か
ふたりで北アルプスに
入山したこともあった
加着の山は気負いのない
楽しい山だった
自分の分にあった
山をやるー
頂ハンターではなく
初登頂という記録にも
特別の野心があるわけ
てはなかった
楽しかった
加代子を誘って
三人で上高地から穂高に
入ったこともある
その加倉がいったいいつから
どうして加代子とつきあう
ようになったのか
深町にはわからなかった
いつのまにか
加代子が自分と
会うのを避ける
ようになった
そして...辛かったのは
加代子と加倉に対して
自分の内部に疑心暗鬼
という心の鬼が住み
はじめた時だ
2年前の秋
加倉から飲みに行かないかと
誘われた
そしてそれが何を意味する
のか深町にはわかっていた
もう10年に
なるんじゃ
ないかなあ
マナスルの
遠征隊
だったよな
ああ
おまえは
撮影隊
おまえと
初めて
会ったのは
たしか...
おれは荷揚げ隊
こっちはけっこう
きつかったな
いくら飲んでも酔わなかった
深町の日数が少なくなり
その分、加倉が饒舌になった。
あん時
おまえと年齢や
大学が同じだという
ことがわかったん
だっけ
キャンプで
よく話を
したっけなあ
加倉
もう
そろそろ
いいんじゃないか
言っても
かまわないん
だぜ
...
加代子と
つきあって
るんだろ
...
すまん
フフフラス...
もっと早く
言うつもり
だったんだか
とくとく
とくとく
すまん
おれたち
結婚する
つもりでいる
ぐび
結婚は考えた
ことがないわ
あなたとは
今の関係が
自分に一番
あっていると
思うの
あれほど結婚を
拒んでいた加代子が
どうして加倉との
結婚を覚悟したのか
その日から
呼吸するのさえ
苦しいような
日々がつづいた
ーっ
え
おえー
そういう時
エヴェレストの話が持ちあがり
おれはゆく決心をした
エヴェレストによって
自分は教われようとしたのだ。
しかし
深町がエヴェレストに
たつ半年前
冬の一ノ倉沢で
加倉典明は死んだ
雪崩だった!
ねえ
ホテルの部屋
...
もう
やめましょう
こんなこと
キャンセル
して...
もうわたしを
苦しめ
ないで...
あなたにも
わかってる
はずよ
...
違う
おれは
君を苦しめよう
なんて思っちゃいない
おれは
別に..
楽に
なろうとして
こんなことして
るんじゃない
...
おれは
...
おれは納得したいだけ
日なんだと言おうとして
『深町は言葉を切った
「その納得がまだ
自分ではできていないのだ
『未練がまじい自分が
腹立たしかった
深町には自分が深い
出口のない暗い穴の底に
いるように思われた
もう加代子と自分との
間が駄目なのは
わかっている
もうやめにしようと
言えば加代子も自分も
楽になれるのだ
けれど...まだ深町には
それができなかった
それは自分の勝手な逃げだと
思うーー情けなかった
自分の気持ちがうまく
名づけられなかった
あなたは
わたしを苦しめる
ために
まだ
わたしのこと
好きだなんて
言ってるのよ
加代子の言葉が
錆びた鉄片のように
胸に刺さっていた
「もし羽生との一件がなかったら、
今自分はいったいどうなっていたのだろう
あの胸がひりひりするような山!
頂上を見あげれば
胸が押し潰されてしまい
そうになるような思い
そういうものからは
別の世界に自分は
ゆくことになる
そういう場所から
自分は去ってしまう
ことになる
去りたくない!
おそらく自分がいま
羽生を追っている
というのは
そういうことなのだ
羽生を追っかけている
間はまだ終わって
いないのだ
なにが終わって
いないのかー
おそらく
自分の山が...
それはーーこの世に存在しない山の頂
幻想の山の頂なのかもしれない...
......
ぷぅ
まいった
なあ
本当かよ
本当かよ
深町は「岳遊社」の
宮川にネパールであった
出来事を話した
そそれ
本当なら
こ...
こいつは
どえらい
ことだぞ
深町はもう一度
ネパールへ行く
つもりでいた
マロリーの
カメラか
...
信じら
れんな
自覚で行けなくはないが、仕事でと
いうことになれば経験が助かる
あのカメラが本当に
マロリーのカメラであれば
ビッグニュースになる
山岳雑誌にとって
これほどの
スクープはない
だから
カトマンドゥ
からおまえに
カメラの
機種のこと
聞いたんだよ
わかった
協力するよ
費用は
全額
うちがもつ
それで
このことは
誰にもしゃべって
ないだろうなあ
ああ
おまえが
最初だ
宮川もマロリーこのカメラが、今発見、
されることの意味は充分わかっている
そうか
よかった
いいか
これは
あんたと
おれだけの秘密だ
社内でも
しばらく
このことは
内緒にしておく
そうですよねそれですか
言えば
必ずどこかに
洩れるからな
ごく
ごく
興奮
してるのか?
じっとして
られるかよ
あったり
まえだろ
ふぅ
マロリーの
カメラだぞ
へたすりゃ
マロリーがエヴェレストに
初登頂したかどうか
という謎がとける
力もしれないんだぞ
行っち
まえよ
ネパール
ああ
今すぐにでも
行きたいさ
けど
なんの
あてもなく
あの男を捜し
出すのは
むつかしい
もう少し
こっちで羽生の
ことを調べて
おきたいんだ
羽生丈ー
という人間に
ついてね
...
1985年の
ヒマラヤ遠征のあと
いったん日本に帰って
きた羽生が
その
翌年
すぐまたネパール
に行っている
これは
どういう
ことか...
もしかすると
その前年の
ヒマラヤ
遠征の時に何か
あったのじゃないかとも
考えられる
うん
正確には
わからんがね
あの例の
嘲されてる
事件のことか?
ともかく
1985年の
ヒマラヤ遠征に
その鍵がありそうな
気がする
東京山岳協会がヒマラヤ連征を計画
したのは1984年であった
エヴェレストーー冬期の南西壁からの登頂という
未踏のバリエーションルIトをねらった遠征である
特定の山岳会にこだわらず
会に属さない人間や
あちこちの山岳会から人材を
集め、登頂をねらうー
大手の新聞社がバックに
つきスポンサーとなった
大学山岳部・OB・
山岳会のトップクラスの
人間が集められた
そのメンバーのなかに
羽生丈二も入ったのである
そして羽生にとっては運命の人間とも
言うべき具合常雄も隊員に加わった
東京山田!
羽生がメンバーに選ばれたのは
...
羽生
ですか
色々と癖の
ある連中の集団の
なかでですよ
さらに癖の
あるあの男が
いや
わたしは
何の問題も
ないと思って
いますかわ
どうも
賛成しかね
ますねえ
うまく
つとまります
かねえ...
羽生の山での
能力は
すばぬけて
います
それは
グランドジョラスの
岩壁で2日の
ビヴァークを
生きぬいたことでも
証明されています
うまく使い
さえすれば
むしろ
最強の戦力と
なるでしょう
隊員の通考委員のなかに青島山岳会の
伊藤浩一郎が入っていたからである
伊藤が隊員として
羽生を強く推したのだ
年齢的には
問題はない
のかね
ええ大丈夫です
羽生の体力に
ついては30代初めの
人間並みです
それは
わたしが
保証します
羽生は
登頂成功の
ための大きな
戦力となると
思います
この時
41歳
羽生丈二
38歳
長谷常雄
そのため、Bazuc
SouthPeak
8760m
Yellow.Band
第13話
ロサガルマ
ほう
東京山岳協会が
計画したという
あの遠征隊
にか?
ええ
伊藤さんが
推してくれ
たんです
おれを
そうか
そりゃ
おめでとう
やっぱり
...
...
どうし
たんだ?
伊藤さんは
いいひとだ
おれのこと
.....気に
かけてくれて
たんです
やるぞ!
それで
遠征隊は
いつ出発する
予定なんだ?
おれは
やるぞ!!
エヴェレスト
南西壁か
...
そりゃ
すごいな
ええ
今年の
冬です
12月に
入山すると
聞いています
水野
さん
ああ
わかってるよ
すみません
あそこ
冬期は
まだ未踏峰
ルートなんです
だめだと言っても
行くやつなん
だからな
おまえは
ありがとう
ございます
アパハハハ
やるぞ!
やってやる
伊藤さんの
ためにも
ぜったい成功
させてみせる
羽生さん
...
お願い
危ない
ことだけは
しないで
ん...
クク
それはおれに
山に行くなと
言ってる
ようなもんだ
アハハハ
心配
するな
おれは
必ず死ぬと
わかっているような
ことはしないさ
...
なんだ
かんだ
言っても
ぐび
やっぱり
あいつが気に
なってねえ
グランドジョラスの
こともあったし
あの時は
あの男の人生に
もう一度だけ
機会を作ってやり
だがったんですよ
大きなスポンサー
がついたし
自己負担金も
羽生の払えない
額じゃない
エヴェレストの
未踏の岩壁からの
登頂というのは
これが最後の機会に
なるでしょうね
それに...
41歳という
羽生の年齢から
考えても
ま仮に
羽生の登頂がないに
しても登頂成功の
ための大きな戦力に
なるに違いないと
考えたのです
しかしーその伊藤の期待を
羽生はみごとに裏切ることになる
エヴェレスト南西壁上
冬期登頂という勲章を得るためには、
登山開始は12月に入って
からでなければならない
具体的には12月に入る前に
ベースキャンプ設営やそこまでの
荷揚げはやってもよいとされている
しかしーベースキャンプから
上への登山は12月に入ってから
やらなければならない
1985年12月
登山隊全員がベース
キャンプに集結した
隊員30人
いずれも実力者たちだ
2日後―キャンプ設営の
荷揚げ作業が開始された
ハア
ハア
羽生は誰よりも多く働いた
誰よりも重い荷を背負って
羽生は登った
ハア
フッ
...
あれが
無謀であった
フッ
羽生か
すっげえ
いったい
何キロかついで
るんだ?
ヒマラヤの荷揚げではどんなに体力の
ある人間でも普通はせいぜい20キロ
どんなに多くとも背負う荷は
25キログラムまでである
それを羽生は
30キロ背負った
隊全体にアピールすることは重要だが、
荷揚げ段階で無理すると体調を崩しやすい
しかし、羽生には意地があった
鬼スラの2度にわたる
冬期の登録
ハッ
ハッ
グランドジョラスでの
奇蹟の生還
ハッ
羽生はその時伝説を
持った人間であった
しかも年齢は41歳
なんだか
ねえ
無理してんじゃ
ないんですか
さあね
どれだけ
やれるんだか
みんな
昔の話
だしな
年も
年だし
そういう囁き声も
羽生の耳に届いてくる
今は
どうだか..
へたすりゃ逆に
足ひっぱられる
かもしれないぜ
そういう声に
あれが
あの
羽生かあ
“そうだ。おれがその羽生だ!!
強い声で応えるように
羽生は重い荷を背負った
おはよう
こさいます
おはよう
あ...
羽生は長谷と
必要以上には
口をきかなかった
同じ神話上の人間でも長谷常雄は
自分のペースを聞きない
皆と同じ荷を背負い
淡々と登ってゆく
ある個人が8000メートル味の受頂
という結果にたどりつくまでには
実に様々な力学に支配される
最初の力学はまず遠征
隊員に選ばれることである
次は体力である
そして健康
次は怪我
どんなに体力があっても
高所に順応できなければ駄目だ
強い意志力も必要とされる
そして人望ーーあるいは
人脈と呼んでもいい
隊長がその個人を受頂隊員として
選んでくれなければ登頂はできない
さらに幸運も必要である
ベースキャンプからCilCzとキャプを
上げてゆき最終的にCBから頂上アタック隊が
登場をかけて出発することになる
それまでに隊員全員が
荷揚げをやる
この時、ローテーションの都合で
たまたまベースキャンプやClにいると
まず登頂隊員に選ばれることはない
その全ての作業が終わった時に自分が
どこにいるかが大きなボイントとなる
たとえCGにいる場合でも体力の消耗
しきっている隊員は選ばれないこともある
こういう状況の中で
隊員同士の腹のさぐり
あいが始まることになる
わるいな
おれ
今日は
ベースキャンプ
まで降りる
頭痛が
ひどいんだ
自分の都合のよいボジションや
体力温存のため嘘もつく
酸素の濃いベース
キャンプに戻り
体力を回復させておく
羽生が参加したこの隊は一匹狼的な連中の
集まりである「悪く言うえば寄せ集めの隊である
他人のために荷揚げをしに来たわけではない
誰もが登頂をわらっている
キャリアや実力からいって誰が頂上を踏んでもおかしく
ないしかも少なくない自己負担金を払っている
それでも、
_入山して十日目
南西壁の登録は難航を極めた
フシュ
フシュ
雪が深い
気温は連日、標高
8000メートルあたりで
日中でもマイナス3G度
残りの日数だけが
どんどんなくなってくる
途中雪に時間をとられた
そのあとに世界最大と
言ってもいい巨大な岩壁が
控えている
長くとどまろうにも食糧が尽きて
しまってはどうしようもない
天空に吹きっきらしになった岩壁だ
南西壁の登頂が危ぶまれた
予測していた
以上に荒天が
つづいた
キャンプ設営も
難航し
大幅な遅れが
でている
どう
だろう
そこで
提案だが
別働隊を
編成してノーマル
ルートである
南東稜を攻めよう
と思う
隊長!
おれは
反対です
ザワ
ザワ
ザワ
何故なら
南東稜はこれまでに
冬期においても
何度となく繋られて
いるルートです!
たしかに
南西壁は
このままだと
琴れないかも
しれない
そこを撃ることに
どれだけの意味が
あるのか
今ここで
隊を二分して
しまったら
残っている
可能性がさらに
小さくなってしまう
ことになります!!
しかしまるで
可能性がなくなって
しまったわけでは
ありません!!
南西壁登蝶を
つづけるべきです!!
羽生
おおれは
最後まで
南西壁に挑む
ことこそ意味ある
ことではないかと
思っています
隊長!
わかっている
.....まあ
座れ
おそらく皆も
羽生と同じ
気持ちだと思う
今回の遠征
にはパックに
大きなスポンサー
がついている
しかし
...
たしかに
今回の隊の目的は
南西壁だが
そこを登頂でき
なかったとしても
たとえ
ノーマルルートでも
頂上を踏んでいるのと
いないのとでは
大きな差がある
スポンサーにも
言い訳がたつ
この選征には
映画班まで
参加している
...
南東稜からの
登頂をねらう
別働隊を編成
するといっても
南西壁を
あきらめる
わけじゃない
運がよければ
両方の登頂が
できるかもしれない
たとえ
ノーマル
ルートだった
にしろ
世界の
最高峰は
最高峰だ
今この時を
逃がせば
その頂を
踏める機会は
なくなってしまう
その時、隊員の多くは和賀良一
隊長の意見に賛成した
わかって
ほしい
どうか
皆に
この提案を
受け入れて
もらいたい
羽生
...
わかってくれ
今さら
ノーマルルートに
どういう意味が
あるっていうん
ですか!?
少しでも
可能性のあるうちに。
南西壁に隊の
全力を投入すべき
じゃないですか!!
羽生...
くっ...
わかり
ません...
しかし
隊は二分された
ハア
ハア
ハア
その後の羽生は鬼が
憑ったようになった
先頭にたって荷援げから
ルート工作までひとりで
二人分から三人分やった
ハフ
ハッ
〝あんな人間みた-ことがありません。
ハウ
ハッ
和賀は無限の体力が羽生の体から
湧き出しているように思えたという
12月15日-
エヴェレスト南西壁
C5標高7986メートル
商西感隊は羽生を先頭にキャンプ
設営の荷揚げとルIト工作をつづける
ただ黙々と
標高7500メートル地点
より酸素を使用する
シュフッ
シュフッ
おどろいたな
ここんとこ
連日だぜ
すごい人だ
頂上アタック起点である
最終キャンプCBの設営
予定地へ向かう
さすが
だね
あの
年齢で
よく
ここまで
やれるもんだな
やっぱり
並みの山屋
じゃない
もしかすると
いけるかも
しれないぞ
南西壁
12月19日
標高8350メートル
C6設営
翌日羽生は頂上アタックの
為のルート工作にでる
シュフッ
シュフッ
スラブを1ビッチトラバース
すると急な雪壁となる
その雪壁を直上しスノーパンドを右へ
トラバースすると4メートルほどの
垂壁にぶつかる
華麗を越えスノーバンドに出る
支点はすべて岩場の
リスを探して取る
ようやくローシェよりも高峰の
8516メートルまで
ルート工作をすすめる
なんとしても
8760メートルの
南峰ルンゼまで
ルート工作をのばして
おきたかったが
ハフッ
ハァッ
荷揚げ物資の不足と
頂上アタックまでに
残された時間に
余裕はなかった
ハフッ
ルート工作はやむなく
南峰ルンゼ手前のスノーバンド
標高8600メートルあたりで
断念する
ガガガ...
こちら
南西壁隊
シュ
ベースキャンプ
聞こえ
ますか?
こちら
ペースキャンプの
和賀です
どうぞ
えー
羽生です
現在
南西壁隊の
ルート工作は
およそ8600
メートル地点まで
到達しました
そうか
よくやった
ごくろう
さん
〝信じられませんでした
本当に驚きましたね。
隊長の和賀良一はロではまだ
登頂可能と言っていたが、
南西壁はあきらめていたという
それが羽生のおかげで登頂の
可能性が見えてきたのだった
えー
こちらの
天候は
おおむね
良好ですが
多少
気温が高いのが
気になります
こういう条件では
天候の崩れる
おそれがある
ようです
プ・モリの
上空に高層雲
が出ています
頂上アタックは
早い方がよいと
思われますが
どうぞ
了解
そして南西壁隊は
頂上アタックに
向けて
羽生丈二41歳と
石渡敏31歳は
川北正義32歳と
森田学29歳が
C6に
C5に置かれた
ところがー
明日頂上アタックという時
になって雪が降りはじめた。
それはすぐに
吹雪となって
2日間吹き荒れし
3日目にようやく晴れた
しかし3日目は
動けない
雪が落ちつくまで
1日待たなければ
ならない
はぁぁ
くそ
せっかくの
ルートが
雪に埋もれて
しまった...
岩や古い雪に積もった雪が
風と陽光にさらされて
表層雪崩をおこしやすいからだ
和賀は迷ったー
いったいどういう順序で
頂上アタックを仕掛けるか
機会があるのはCssにいる2名
とCBにいる2名だけである
だが4人一緒に頂上へは
向かわせられない
そのローテーションに和食は
迷ったー
一方がアタックをかけている時は、
一方がサポートにまわらなければ
ならないからだ
体力の消耗が激しいのは当然
上のキャンプにいる羽生と右波である。
しかし今羽生は
調子がいい
フーー
体力でいえばC5の
2人と同じかもしか
するとそれ以上だろう
だが羽生と一緒にいる
石渡の体力的な
状態にもよる
フーー
岩壁にとりつく地点までは
川北組でゆけるだろう
CGから上の岩盤へ出るまで高度差
200メートルほどの間で何や所か
きつい岩壁がある
しかしそこから先岩壁の技術については
川北組は羽生組に劣るこの過酷な条件下で
川北組が南西壁を落とせるとは思えない
今、南西壁を落とせるのは
唯一、羽生丈二がいるのみである
しかし第一次アタックではったとえ
羽生であっても南西壁は落とせない
そこをクリアした後、また最後の範囲で
ある南西壁の垂量を攻めるだけ
体力が残るかどうか
予報では、この
好天は4日はもつ
考えた末に和賀は
結論をだした
えー
こちら
ベースキャンプ
C§C5
応答
願います
どうぞ
はい
こちらC6の
羽生です
えー
それでは
頂上アタックの
ローテーションを
説明する
いいかね
最初のアタックは
今C5にいる
川北と森田で
かける
シュー
シュ
聞こえて
ますか?
どうぞ
アタックの機会は
それぞれの
パーティに
1度ずつ
2度ある
は..
...
はい
アタックは
明後日
きょう1日
雪が落ち着くのを
待って明日
川北組と羽生組が
キャンプを入れかわる
サスピーッ
新雪は
危険だ
そうすれば
C5とCBの
ラッセルはどちらも
半分ずつですむ
シュー
羽生組が
C6からC5
そして川北組が
C5からC6
シュー
そして3日目に
川北組がC6を
出発
南西壁の
上部にとりついて
アタックをかける
それで頂上を
落とせれば
よし
つづいて
4日目
羽生組がC5から
いっきに頂上まで
アタックをかける
4日目の
調子にもよるが
この間
川北組はC5
まで下る
5日目に
再度頂上を
わらう!
調子が悪ければ
羽生組はC6に
「泊した後
シュー
シュー
羽生!
聞こえて
るのか?
了解
ですか?
どうぞ
なんで...
.....
隊長
なんで自分が
第2次のアタック隊に
まわらなければ
ならないんですか
お...おれ
羽生
...!
おれがいたから
ここまでルートも
てきたし
一番がんばり
ましたよ
キャンプも
あげることが
てきたんじゃ
ないですか
そのおれが
なんで2番
なんてすか
1番目に
誰かが
登ったら
2番目は
ゴミじゃ
ないですか
...
なんでおれが
2番なんですか
たのむ
羽生
わかって
くれ
羽生!
わかり
ません
この時和費は羽生に初登頂を
ねらわせようと、そういう
腹づもりのローテーションだった
誰かとういう状況で出発しようと
第1次アタック隊の登頂は明らかに
無理であると和資は判断した
登頂の機会があるとしたら、
第2次アタック隊である
第1次アタック隊に選ばれた
川北は言うなれば羽生に南西霊を
落とさせるためのラッセル隊の
役目なのである
シュ...
しかしそれを口にする
わけにはいかない
シュー
口にせずとも川北組は
それを理解している
羽生のパートナーとなった
石渡もそれを理解している
理解していないのは唯一
羽生だけであった
ガカ...
羽生!
聞こえて
いるかー
羽生...
おそらく
シュ
シュー
ガガガ
しかし、感情の部分で羽生は
それを受け入れられなかった
羽生も理屈の部分では
それを理解しているだろう。
返事を
してくれ!
たのむ
わかってくれ
羽生!
ガガガ
シユー
シュー
シュー
...
わかり
ました
降ります
これが
ベストなんだ
......
もう...
おれの山は
終わったと
いうことです
羽生!
2日目!
羽生と石渡は
C6を降りた
途中川北組と
すれ違った時
羽生
さん...
がんばれよ
羽生はC5のテントには
入らなかった
おれは
降りる
え?
せっかく
ここまで
来て...
今降りて
しまったら
どうにもならない
じゃないですか
石波
おまえは
残れ
どうしたん
ですか
羽生さん
ああ
誰がなんといっても
もうおれの山は
終わったんだ
...
だけどな
もう終わったんだ
仕方がなかったー
つまりこれが羽生さん
らしいってことなのかー
石渡はその時そう思った
結局―南西壁の
冬期初登攀は失敗し
南東稜隊の
カはー
長谷常雄と三島和彦が
登頂を果たした
このエヴェレストにおいても
羽生と長谷は明暗を分けたのである
第14話
SK2
そして
羽生は日本
から消えた
.....
じゃ
ぐっ
ふぅ
あんたが
カトマンドゥで
会うまではって
ことか...
その後の
消息を知る
ものは誰も
いなかった
そういう
ことだ
今まで
羽生のことを
調べてみて
ひとつだけ
見えてきた
ことがあるんだ
長谷の
ことだ
長谷?
なにか?...
長谷って
...
あの
一昨年死んだ
長谷常雄の
ことか?
ああ
.....
あのふたりには
なんとなく因縁
めいたものを
感じているんだ
光と影
みたいな
もの..
長谷がいる
ところには
羽生がいる...
同じように
羽生のところに
長谷がいる
そう考えれば
羽生がカトマンドゥで
何をやろうとして
いるのか
見えて
こないか?
鬼スラをやった
井上さんが
言ってた
羽生は生きて
いるなら必ず
現役の山尾
だろうって
羽生の中に
複んでいる
鬼みたいなものが
山をやめさせ
ないだろうとも..
"独りの山は深い
震谷帯雄
「グランドショラス」も遊花
ハア
ハア
ハア
イグランドジョラスを繰っていて、
右の方にもう少し安全な
ルートが見えているのに、
羽生さんの落ちたところを通ったんですが。
〝羽生さんは真っ直ぐ。
そこから上がっちゃった
みたいですね!!
んやってやれないコースでは
ないとは思いますが!!
〝どうして羽生さんはここで上に行く
コースをとっちゃったのかなと不思議な
気がしました!!
79年2月
長谷常雄はグランドショラス北盛
冬期単独登頂を果たした
それはヨーロッパ三大北堂名期景独
初登攀という世界の登山史に類を見ない
快拳を成し遂げたのである
長谷常雄が死んだのは
山になった男
世界のアルビニスト
長谷常雄の死
まあまったくそんなことじゃないのですからここまでしょうか
これからこんにちょっと大丈夫なのですね
カラコルム山脈K2
での登山中の雪崩に
よるものだった
深町はK2に撮影隊として同行したカメラマン
北浜秋介のインタビュー記事を山岳雑誌
「長望のバックナンバーからみつけた
そこには事故の状況が
生々しく述べられていた
「標高8611メートル
K2
K2は〝カラコルム2号〟という
意味の測量記号である
それがそのまま山の名となった
パキスタンの北東の端にあるエヴェレストに
次ぐ世界第2の高峰である
1985年のエヴェレスト以来
これが2度目の長谷常雄の
8000メートル蜂挑戦になった
しかも長谷常雄は単独で
K2に挑もうとしたのである
山のなかの
!!
...
K2
日本のサポート隊が10名つき
5400メートル地点にベース
キャンプを設営した
もっとも
困難で...
もっとも
美しい
8000メートル
峰......?
...
エヴェレスト
よりも
無酸素
そういう条件を自らに
課しての挑戦であった
美しい
エヴェレストで自信をつけた具合の通常が
K2の無酸素単独登頂てあったのである
44歳―現役の登山家としては、
最後の挑戦であったのだろう
単独登頂が成功する
条件のひとつとして
ベースキャンプより上部については、
いっさい他者の協力を得てはいけない
という暗黙の了解がある。
長谷は自力で自分のキャンプの
ための一切を荷揚げすることになる
サポート隊と長谷が関わるのは
無線による交信だけである
長谷さん
あなたは
山に好かれて
いるんですね
きっと
K2が
おれに早く
来いと言って
るんだろう
こんなに
好天がつづくこと
なんてめったに
ありませんよ
そう言って
長谷は高度
順応のため
軽く
そんな感じで
ベースを出て
いったんです
私はK2は
2度目ですが
よく知っています
ペースキャンプから
第1キャンプへ向かう
途中標高6000
メートルにも達し
ない場所でした
信じられ
ませんでした
ほんとに...
今でも信じ
られません
あそこは
これまで一度だって
雪崩のあったことの
ない場所でした
斜度だって
緩やかで寒くて
何日もいい天気が
続いてたんです
新雪が乗っていた
わけじゃなかった
雪だって固く締っていて
ラッセルなんて
必要ないぐらいでした
今回のルートで
一番安全な場所の
はずだったんです
出発を撮影
してから
我々も20分
遅れて長谷を
追いました
ハフ
ハフ
30分ほど
歩いたら..
先行している
長谷が遠くに
見えたんです
よし...
いいぞ
それは
感動的なほど
美しいシーン
でした
この絵だ!
おい
カメラ
はい
早く
セット
してくれ
...ん!?
雲だと
思いましたよ
最初はね
でも雲じゃ
なかった
!
そいつが
膨れ上がりながら
斜面を駆け降りて
くるんですよ
どーんという
雪崩の音が
聴こえたのは
その後です
おお...
雪崩だっ!!
そう思った
時には
長谷も
気づいて
いました
長谷
さーん!!
ゴゴ
一瞬..
立ち止まったまま
雪崩を見つめて
いましたが
すぐに
こちらに向かって
走り出しました
でも.....
見てる方は
どんなに長谷が
急いだって
無理というのが
わかりました
ああ
...
間に
合わない
それは
わかりました
怖いって
いうんですかね
恐怖っていう
ことなんで
しょうけど...
尻の穴がね
きゅうと
しばむような
感じが
ありました
長谷は
いくらも
疾らないうちに
あっという間に
雪崩に巻き
込まれました
こっちは
動くどころ
じゃない
すぐには
声が出ません
でしたよ
ああ
...
な...
雪崩だあ
...
ああ
バカ...
あいつ...
なんで
わああ
ーー
早く!
早く
誰が
なんていったか
とにかく
叫びましたよ
我々はね
ハッ
長谷
さーん
長谷
ーっ
ハッ
ハッ
それから
ビッケルだけ持って
走っていったんです
生きていて
くれって
それだけを
念じて現場に
駆けつけたんです
遠くから見たら
綺麗な雪煙みたいな
やつだったんですが
近くに行ったら
とんでもない
長谷
さーん
着いて
みたら
これはもう
駄目だろうなって
いうのがわかった
長谷
ーっ
これは
もう......
助かりっこ
ないと...
第15話
3山になった男
ああ...
ああ...!
な..
なんてことだ
急げ!!
時間が
ないぞ
20分以内に
捜し
出すんだ!!
とにかく
20分以内に
掘り出すことが
できれば
蘇生できる
かもしれない
そう
思ったんです
ここは4人で
一緒に長谷を
捜し210分
たったらひとりが
ベースまで人を
呼びにもどる
4人で一列に
並んで
ピッケルで雪を
掻いてゆく
それで
やりました
20センチ
ずっ
中に屍体が
埋まって
いれば
ハッ
ハッ
ハッ
ハッ
ピッケルを
突きたてた
感触でわかり
ますから
ハッ
ハッ
しかし
結局
長谷の屍体を
見つけたのは
翌日になって
からでした
今...こうして
あの時のことを
想いかえして
みても
まだ信じ
られません
おそらくあの日
長谷は山に
帰っていって
しまったんですね
ぼくはふと
思うことが
あるんです
長谷は山に
なったんじゃ
ないかって
K2が
長谷の山に
なったんです
K2か
...
そして深町には、もうひとつ
気になることがあった
ごく
[「天上の岩壁」である
長谷が死んだあとに出版された通常
畔印班渋擲喫蝋
長谷があちこちの雑誌に書き
まだ本になっていないものや
未発表の文章を集めたものだ。
その中に。目記”が
入っていたのである
章のタイトルは
〝K2日記〟となっていたが、
K2単独登頂を思いつき実行に至る
までのことを日記風にメモしていた
ものを活字にして
「K2日記」としたものだ
いずれあとで登頂を
果たしたら、長谷は
このメモからきちんと
原稿におこすつもりで
いたに違いない
自分だけわかる覚悟さに
なっている部分もあった
でも
ではいていまして、
さてはないぞ
さて、どうでも
はいはい
悪そーいっしょーっと
その「K2日記」の中に気になる
文章があったのである
かきりちゃんに異常が認識しないか
このような事は、ふまかきりはお
やれやれる事ならなかないか
...そうでいうのか
...
五月三日
カトマ
AGOのスートル等、無酸素量独愛頂
やる気なんだ。
言わなくてもわかることきときし
いうアイディアがあったんだ。
本気で考えればあり得る
おれもー
たったそれだけの文章で
あったのだが
そこが深町には妙に
気になったのだった
わかった
そのために地元への
もし明らかに入ります。アミアトマネート結婚の
それは嫌だけどね!!腕上がったのね気が
YOOOスームは基本祟謐糸ザ哥畏約笘
やんとこんな
はい!!
8月――
深町は「天上の岩壁」を出版した
渓流社の出版部にいる岩原久弥に
会うことにしたのである
ええ
この本は
私がわがまま
言って自分で
全部作ったん
です
長谷の遺した
手書きのメモや
なんか残らず
捜し出しましてね
ひととおり
目を通し
ましたよ
へえ
そうでしたか
岩原はバリバリのクライマーで
あった過去を持ち、年齢も長谷と
同じ46歳だった
それで...
思ってた
よりも
そのメモ
なんですが
この「K2目記」の
...
かなりの
手間がかかり
ましたね
はあ
たしか長谷さんが
K2無酸素・単独
登頂をやろうと
本気で考え
出したのは
そうです
彼が1990年に
ネパールへ行って
帰ってきてから
だったと理解して
いるんですが
...
そう
ですね
ええその年の
5月でしたかね
つまり...
それはここにも
書かれている
ように
そのアイディアは
ネパールで得たと
考えていい
わけですね
そうなり
ますかね
どうして
ネハールで
長谷さんは
こういうことを
思いついたん
でしょう
さあ
あちらは8000
メートル峰が固まって
ますからねえ
そういうことも
思いつくんじゃ
ないでしょうか
ですが
無酸素
単独登頂と
いうのは
夢物語の
ような...
ええ
たしかにね
ヒマラヤ8000メートル様の
無酸素単独登頂を初めて
やってのけたのは
ラインホルト・メスナーである
1978年8月に
ナンダベルベットのBizSメートルの
頂にメスナーは立っている
ほかにほんのひと握りの
人々がいるだけだ
しかも冬期にそれが
できるのかー
1984年にマッキンリーで死んだ
植村頂己が1901年にエヴェレストの
冬期単独登録を試みたが失敗している
ハッ
フッ
ハッ
8000メートル障
単独・無酸素登頂が
どれほど超人的な
ことかがわかる
強靱な体力と精神力
そして大きな天運がなければ
不可能であった
...
おそらく
それを現実的な
ひとつのビジョンとして
長谷が頭に
描いたのなら
きっかけ
...
ですか?
長谷さんが
誰かとネバールで
会ったということは
考えられませんが、
その会った
ことが
きっかけで...
それで
...
何らかの
きっかけが
あったのでは
ないでしょうか
K2無酸素
単独を思い
ついたと?
ええ
〝8000メートル降
無酸素単独登頂〟
“やる気なんだ
言わなくても
わかる!
「K2日記」の
この日の
メモです
これは
あきらかに誰が
相手を想定して
いるメモです
やる気なんだ!!
というのは、長谷
自身というより
別の人間が
“やる気なんだ”
と考える方が
自然のような
気がするんです
...
うん
そして。言わなく
てもわかる”という
のは
自分ではなく
他の人間が
8000メートル時
無酸素単独を
“やる気である”と
いうことが、この
“言わなくてもわかるん
ということじゃ
ないかと
...
”おれも””と
あるのは
長谷自身の
決意を語っている
なるほど
...
長谷さんは
K2の前に誰かと
カトマンドゥで
会ったのではないで
しょうか?
もちろん
考えられないこと
ではありませんが
...
それで
...
誰と?
羽生丈二とー深町はその名を口に
しそうになりそれをかろうじて堪えた